原石

俺には才能が無いからつって投げ出したものが数え切れないほどある。投げ出したものの中には、長い努力の末に自分のものへと昇華されたかもしれないものが幾千も混じっているんだろうなって、ざんない気持ちでいっぱいになる夜もこの頃ある。

 

俺には何もないのかって、焦って机の引き出しを漁るかのように自分の長所や得意分野を探し出す。が、どれもこれも趣味程度と言えるほどの何かしらしかなく、人より抜きん出た何か、人より何カラットも綺麗だと胸を張って言えるほどの宝石を引き出しにしまってはいなかった。

 

こうなったらもう親や周りの環境を恨むほかやることがない。なんで俺は具えるべき英才教育を受けさせられてこなかったんだって、本当に自分に必要だと思ったものがなんで備わってないんだって、躍起になって責任転嫁して自分を保つ。

 

 

高卒ルーキーという文字を心からやっかむ。なんたって、幼い頃見上げた高卒という年齢が、今では見下ろす年齢になってしまった。そんなルーキーが年俸何千万って貰うかもしれないって考えるとゾッとする。大抵の人は、そんなことに納得できないことなんてなく、すんなり受け入れてしまうような事実だろう。しかし、自分にもそのぐらい貰ったっていいじゃないかって言えるほどの秘めた何かがあるんじゃないかって、信じてやまない。

 

馬鹿言ってんじゃないよって、自惚れもここまでくると甚だしい。極端に肥大化した嫉妬心が産み出した、もはや獣だ。いいよな、あいつには才能があるからと、長い歳月賭けて研磨した結果だよと、終わっておけば良いものを、なんでそこで自分にも出来るんじゃないかって勘違いが産まれるのか、疑問だ。

 

もういい歳してんだ。堅実な人生も悪くないじゃないかと、お前は充分頑張ったと、誰かに言われるだろうなと思う。そうだ。俺には結局何もなかったんだって、わかっただけでも充分成果だ、もう何もしなくていいんだ、俺は原石じゃないただの小石なんだって、自己が作り上げた幻想に操られるマリオネットとして果たす役割はもうしなくていいんだって、俺はもう自由の身なんだって

 

 

 

 

 

 

 

と振り払えるはずもない戒めの残滓と共に未だ日々過ごしている囚われの身である。

 

原石を持つ者でも、持たざる者でも、不恰好ながら努めた結果手にする何かがきっとある、って知るのが遅かった自分はこれから何を始めるべきか一向も検討が付かない。